ワンパンマン

Web上での人気連載作品が、「アイシールド21」で知られる村田雄介先生の手でリメイク。


原作のストーリーの面白さと独特の緩い雰囲気はそのままに、大迫力のバトルシーンの画力が加わることで、欠点の見当たらない凄い漫画が誕生しました。
人類の生存を脅かす怪人が出現げんする中、その怪物を退治するプロのヒーローたちが活躍しているという世界観。


一見よくある舞台設定ですが、この作品はここからがひねりが利いています。
主人公を務めるサイタマは、力を極めてしまいどんな相手でも一撃(ワンパン)で葬り去ってしまう猛者。


通常のヒーロー物が、強さを追い求めて成長していく物語なのに対し、サイタマは登場時点でその強さの頂点に達しているのです。
その結果、サイタマは力を持て余し、非常に退屈な日々を送り緊張感のない戦いに不満を覚えることに。


ヒーロー物という王道の設定に、最初から最強という邪道な設定。
思いつきそうで思いつかない優れた発想で、最初から読者に興味をそそらせます。
この作品の持つ二面性はそれにとどまりません。


強すぎる主人公という設定を生かしたギャグの数々があるかと思えば、怪人との壮絶なバトルは高い画力を誇る村田先生により緊迫感マックス。
緩急のつけ方が絶妙なので、読んでいてマンネリ化することがありません。
登場するヒーローたちも個性豊かで、そのアイデアの豊富さには感心させられます。


痛快で笑える読みやすい漫画なのですが、テーマ性の高さにも注目。
主人公サイタマは強すぎるがゆえ、なんのために戦うのか、ヒーローとは何かを完全に見失っています。


これは、ヒーローを描く際には避けては通れない問題。
大ヒットしたクリストファー・ノーランバットマン三部作も、ヒーローの存在意義は大きなテーマでした。


主人公の力を認識しているのはごく一部、それ以外からは軽んじられているというところも王道を上手く踏襲しています。


つまり、この作品は過去の名作を研究し、その上で重くなりすぎないテイストで新しい答えを提示しようとする意欲作でもあります。


古くて新しい見どころ満載の漫画が「ワンパンマン」です。

 

ワンパンマン 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)